Raspberrypi財団について

 今更ではあるがRaspberrypi財団生誕10周年との事で日頃お世話になっているRaspberrypi(以下RPI)開発元の財団についての私見

www.raspberrypi.org

1.無印Raspberrypiの時代

 最初のRPIはARM11のBroadcomのSOC+256/512MBのPoPで構成されたSBCで電源パタンが弱く(電源グランドパタン面積が小さく)USBデバイスが動作不安定になる場合が少なからずあったと記憶している(特にUSB接続のWifiドングル)。性能もARM11@700Mhzが標準でOMAPベースのBeagleBoard/BeagleBoneと大差無い性能で正直言ってアートワークもプロの設計とは言い難い面もあったと記憶している。なのでGND強化の為の改造や効果が不明な設定だのドライバだのUSBWifiドングルはどのメーカが良いかなどという情報が流布されていた。当時はRPIは数有るOSS系のボードプロジェクトの一つに過ぎない存在で極東島国の国民は変態大英帝国のBBCMicroなぞ知るはずも無くARMプロセサは携帯電話業界の方以外は知名度も低かった。

 RPIが頭角を現したのはボードのハードウェアというよりはOS含めたエコシステムがユーザの需要と信用に応える体制を維持してきた事にあると考えている。例が悪いがBeagleBoadはボード設計も商品コンセプトも悪くは無いがOS含めたエコシステムの情報発信が弱く実用になるシステム構成を構築するのに手間の掛かった。BeagleBoardはTI系の方々のプロジェクトだった様で都合TIのチップとロードマップの影響を受ける(これはRPIも同様だが)上、所詮はOSSの一時的なプロジェクト故財政維持についてもボランティアベースの古き善きOSS文化であった印象がある(フルタイムのエンジニアも居たのかもしれない)。一方RPI財団はその名の如くSTEMを掲げ利益追求ではなく教育(という名の布教活動)を指針としその為のリソースを確保・運営する財団形態とする事で他のあまた存在したOSSプロジェクト特有の不安定さを解消しユーザの信頼を徐々に得ていった印象が強い(と感じています)。

2.RaspberryPi ModelBの時代

 RPI無印の不安定さは一部ユーザでは問題視しておりフィードバックの為か財団は同じチップでリワーク版とも言えるRaspberryPi modelBを発表した。modelAは今でも続くUSBポートとLANを削減してフォームファクタを小型化した組込みシステムバージョンで実際使ってみるとUSBポートの認識が異なる為 modelB対応のOSを本家から導入する必要があったがリワークの効果は素晴らしくUSBポートにWifiドングルを接続しての挙動の不安定さは解消された。これで一安心と言いたい処だがBeagleBoardはCortex-A8に進化しておりARM11@700MhzのRPIでは性能面で劣る面が少なからず存在した。

3.Raspberrypi 2Bと3Bと3A

 このままARM11ベースのSocのストックパーツでRPI財団が終わる(実際そのような事例は少なからず存在した)かと思いきや突如A7QuadのRPi2Bを発表しBeagleBoneを引き離してこの手のSBCとして実践的な性能を得られる希望が出てきた。その後(或いはほぼ同時期)RPI3bが発表されCortex-A53Quadとコアは64ビット対応となり財団としての方向性が確立されたように極東の島国の一ユーザからは見えた。今でも現役なRPI3AはRPI modelAと同じフォームファクタとIOを持ちCortex-A53Quadなプロセサ性能で比較的安価なSBCとして重宝されている(出荷台数は少ないようだが)。

4.Raspberrypi zeroの登場と価格優勢と財団の野望(誇張)

 前後するが財団は低価格・小スペースのARM11ベースのRaspberrypi zeroを発表する。市場を驚愕させたのはその価格でWifi無しで600円程度Wifi有りでも1200円程度で代理店経由で入手可能な「異常な程のコスパの良さ」で怪しげな支那ボードや実績は有るがCortex-A8で進化が止まっているBeagleBoneらはそのサポートとエコシステムの差もあって選択肢から急速に外れてしまった印象がある。そればかりでなくArduino互換機の市場にも食い込んで価格の割にOSが無くリソースも機能も(RPIに比べて)チープなM5StackやWio-terminalを使うくらいならRPI zeroでLinuxベースでnode-redでも入れて楽にIOTごっこ(笑)をする方が個人道楽としては好適と判断するに至る。

5.Raspberrypi4とその後

 RPI4ではメモリも2,4,8GBのバリエーション展開が行われSTEM用途のキーボード付きバージョン展開も行われて少なくとも西側でのSTEM/hobby機材とエコシステムの評価は確立されたのではなかろうかと認識している。プロセサモジュールの展開も行われRPI-A/Bのフォームファクターに縛られずにカードモジュールとしての展開も主に組込みシステムユーザを対象として推進されSeeedの如き支那で本モジュールを使ったパネコン的なアセンブリも販売されている(結構高価だが)。

6.財団と他のOSSプロジェクトの違い

 後知恵になるがRPi財団の成功と他のOSSプロジェクト(例えばBeagleBoarg.org)との違いは何かと言えば

教育(と言う名の布教活動)財団と古典的OSSプロジェクト(多くはボランティア)の活動方針と組織形態

 の違いは大きいのではないかと考えている。当然創業者の人望とリソース調達能力(人、物、金、コネ)は大きくその点でもRPI財団創業者はそれを達成する為の能力と幸運と人脈に恵まれていたのだろう。財団10周年おめでとうございます(感謝を込めて)。

7.翻って我が国のプロジェクトは。。。

 ご承知の通り古くからTRON/T-Engineプロジェクトでターゲットボードも教育セミナもTRONという世界の中で持続しているがRPI程には庶民受けしていない印象を受けるのは坂村教授が目指した世界はプロ用の製品でありSTEMでは無かった点と我が国では財団ではなく協賛企業の一時的なボランティアで運営されリソース(資金、人材、エコシステム)の継続性担保が困難であった点もあるのだろう。

 他方庶民含めたプロジェクトとしてがじっとルネサスが挙げられるがこれも基本的にはRenesasという私企業の拡販行為の一種と見做されRenesas以外の広がりを見せるのが難しい現実はあるのだろう。昔はマイコン作っているメーカにはサポートと評価ボードとそれを使ったエコシステムも存在していたが長年のデフレ不況による縮小と我が国の半導体産業の衰退で余裕が無くなって今に至るという認識でいる。家電は最たるものだがユーザという者はメーカの仕打ち(直ぐEOLするとかサポート打ち切るとか不具合対応が不誠実とか)を良く覚えており(特に問題発生時の対応)それを次の選択基準にするからそういう前科のある多くの日本メーカのプロジェクトに追従する庶民は少ない(もう裏切られるのは御免)なのではないだろうか。。。